2019年11月29日。
cluster上の仮想空間に用意された特設ステージにて、V.V.V.2019アワード受賞フェス「マーメイドシャングリラステージ」が開催されました。
「V.V.V.2019」は、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』が主催する、バーチャルアイドル発掘イベント。
63名ものVTuberがエントリーした1stステージでは、各候補者が応援ボイスをBOOTHに投稿し、そのダウンロード数を競いました。結果、上位9名と審査員選抜枠の10名が1stステージを通過。計19名が2ndステージへと進みました。

舞台をSHOWROOMへと移して行われた2ndステージは、配信中に獲得したポイント数を競うガチンコバトル。結果、ランキング1位を九条杏子さん、2位を紡音れいさんが獲得。審査員選抜の鈴鳴すばるさんと雨ヶ崎笑虹さんを含めた4人が、最終ステージへと進みました。
そして迎えたこの日。
clusterの特設会場にて、本イベントの最終ステージが開幕。6人の審査員と、会場を訪れた多くのファンの前で、4人のファイナリストがパフォーマンスを披露しました。
◆ 目次
オープニングは、ときのそらスペシャルライブ
オープニングは、総合司会・ときのそら(@tokino_sora)さんのスペシャルステージ。
オリジナル曲『ブレンドキャラバン』を元気いっぱいに歌い上げ、会場を盛り上げていました。間近で見るそらちゃんの姿は想像以上に眩しく、輝いて見えました。仮想空間でもアイドルオーラって感じられるんですね……。
すっかり温まった会場で、ライブが終わると一転、司会モードになったそらちゃん。イベントの説明と審査員の紹介を滞りなく済ませたところで、ファイナリスト4名が登場します。

最初に登場したのは、2ndステージ1位の、九条杏子(@anzu_9jo)さん。
緊張気味ながら、「とっても、とっても楽しみにしていました! 今日を! 楽しんでいこうね~~~!」と大きな声で挨拶。この日が初披露となる3Dモデルの姿を見せて、ライブ映像を視聴しているチャット欄も大盛り上がりでした。

続いて、同じく3Dモデル初披露となる、紡音れい(@tmgnrei)さん。
「こんすし~! 天才美少女ミックス師、紡音れいだよ!」というおなじみの口上のあと、熱帯魚の姿で周囲を漂っている観客たちを見回しながら、「大好物は……お寿司です! みんなはお寿司にならないよう、気をつけるんだぞ~?」と、茶目っ気を出しつつ挨拶していました。萌え袖かわいい。

3人目は、鈴鳴すばる(@SuzunaSubaru)さん。
「Hello! 宇宙一の超サイヤ人になりたい! まりなす(仮)の、鈴鳴すばるでーす!」と朗らかに挨拶。打てば響くように拍手をする観客たち(熱帯魚)のモーションを見て、「わぁすごい! パチパチしてる!」と無邪気に喜んでいました。

最後に登場したのは、雨ヶ崎笑虹(@eko_amagasaki)さん。
「黄色い合羽がトレードマーク! お天気キャスターの雨ヶ崎笑虹でーす!」と口上を述べたうえで、「ファンのみなさんが連れてきてくださった、この初ステージ。笑虹はいつだって挑戦者です! 暴走チョロQ、がんばります! 見ていてくださーい!」とコメント。このイベントに賭ける思いの断片を、元気いっぱいに客席へと伝えました。
4人の個性が光る!歌と踊りで観客を魅了したパフォーマンスタイム
4人の挨拶が終わると、早速、パフォーマンスタイムへと突入。
① 雨ヶ崎笑虹『バンドワゴン』

1人目は、雨ヶ崎笑虹さん。
AVATAR2.0所属(※イベント当時。現在はPalette Project所属)。
まだVR空間のステージはあまり慣れていないらしく、「さっき腕が吹っ飛んだんですよ~」とちょっと不安な様子。
それに対して、「大丈夫! 腕はね、吹っ飛ぶものなんだよ~!」と優しい声で即答していたそらちゃんに、謎のプロ意識を感じました。そうか……腕は吹っ飛ぶものなのか……!


このイベントに参加したVTuberの中でも、「アイドル」への想いはきっと誰よりも強かっただろう笑虹ちゃん。そんな彼女がこの日の曲に選んだのは、ラストアイドルの『バンドワゴン』です。

気合いも十分に挑んだステージで、歌って踊る笑虹ちゃん。
その姿は、まさしく「アイドル」でした。


しかし、1番を見事に歌い上げた後の2番。ちょうど歌唱前に思いの丈を語った歌詞の部分で感極まってしまったのか、涙声になってしまいます。
これがリアルなら、きっと客席にいる誰もが声を上げて彼女を応援していたはず。しかし声を出せない仮想空間では、残念ながらその声は届きません。

でもそこには、彼女を鼓舞するように懸命に振られる、たくさんのサイリウムの光がありました。黄一色にキラキラと輝く海の中心で、歌って踊る笑虹ちゃん。その姿を「アイドル」と呼ばずして、他に何と呼びましょう。
なんとか詰まることなく最後まで歌い、踊りきった彼女。そんな笑虹ちゃんのパフォーマンスを目の当たりにして、思わず泣けてしまった人、元気をもらった人、勇気づけられた人も、きっと多かったのではないでしょうか。

この後も魅力的なパフォーマンスが続いたイベントでしたが、この日一番、自分の胸に刺さったのは、笑虹ちゃんのこの一言でした。
② 鈴鳴すばる『Let It Go』

2人目は、鈴鳴すばるさん。
まりなす(仮)の“す”担当。
普段の自由奔放っぷりを鑑みるに、緊張感とは無縁……かと思いきや、この日は少しだけ緊張している様子。すばる様本人は、過去に共演したことのあるそらちゃんがいることで、その緊張も「ちょっとだけ」だと話していました。


歌唱力の高いメンバーが揃うグループで活動しており、すでに何度もライブを経験している彼女。力強いパフォーマンスとカッコいい歌声が魅力のすばる様が今回歌うのは、『アナと雪の女王』で世界的に有名なあの曲、『Let It Go』です。

その歌唱力は、やはり言わずもがな。“ちょっとだけ”と話していた緊張も、歌い始めるとどこかへ吹き飛んでしまったようでした。


南国を模した会場が、急に冷え込んだよう──というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが、ピリッとした空気の変化があるように感じられたのは事実。
第一声で「うおお……」と思わず感嘆の声を漏らし、サビでは周囲の空気が書き換えられたようにも感じられました。曲が曲ということもあり、「踊り」の要素はありませんでしたが、とにもかくにも「歌唱力」でぶん殴られた格好です。

ステージと客席には若干の距離があるとはいえ、その息づかいも感じられそうな間近で、あんなにも圧倒的な歌唱を聞いてしまったら、そりゃもう震えずにはいられないってもんですよ。本気でゾクゾクしました。
パフォーマンス後はいつもの雰囲気に戻って、「すっごく幸せな気分で、すっごく楽しく歌うことができました!」と、元気よく挨拶。審査員のコメントを頷きながら聞く姿からは、このオーディションを心から楽しんでいる様子が伝わってきました。
③ 紡音れい『PLATONIC GIRL』

3人目は、紡音れいさん。
Zero Project所属。
オープニングの登場時にも積極的に声を出し、場を盛り上げていた元気っ娘。その様子から、4人の中では比較的緊張していないようにも映ります。
そらちゃんとの会話中も、客席のほうへとしばしば視線を向けて反応を確認しつつ、身振り手振りを交えた動きのあるやり取りをしている姿が印象的でした。


自身のウリである「ミックス」を、しっかりとパフォーマンスに組み込んでくる。そんな企画力とアピール力も彼女の魅力であり、「そうきたかー!」と唸る観客のコメントも見受けられました。
選んだ曲は、燃えたぎるロックナンバー。

この日が3Dモデルの初お披露目だった彼女ですが、初めてのVRライブとは思えない動きにびっくり。腕を上下左右に激しく振るダンスと歌で、会場を盛り上げていました。


イラストそのままにも見える3Dモデルは、素人目にもクオリティが高く、かわいらしい。腕の動きに合わせて揺れる萌え袖に自然と視線が向かうなど、視覚的にも楽しめるパフォーマンスでした。
途中、音が聞こえなくなるトラブルもありましたが、そこはさすがのアドリブ力。ラスサビのタイミングで「取り戻すぞー!」と声を上げ、すぐに軌道修正。
危なげのないパフォーマンスで、最後まで楽しんで見ることができました。歌い終わりコメントをした後、そのままうっかり退場しそうになってたのはご愛嬌。


こんなん言われたら泣くじゃん……。ズルいじゃん……。ずっと応援してきた推しが晴れ舞台に立って、間近でパフォーマンスしていて、かわいくって、動いて、推しが動いて……うご、うご、うごごゴゴゴゴ!
④ 九条杏子『アイドル活動!』

4人目は、九条杏子さん。
AVATAR2.0所属。
1stステージでは後輩ボイスでファンを悶絶させ、2ndステージはトップで通過した実力者。
この日が3Dモデルの初お披露目であり、キリッとしたお姿とお声で会場を魅了していた──かと思ったら、少なからず緊張していらっしゃった様子。しかし、そんな緊張も吹き飛ばすように発せられる明るい声が、耳に心地良く響きます。


そんな“九条家”の1人である彼女がイベントで歌う曲は、大好きなアイドルアニメの曲。『アイカツ!』より、『アイドル活動!』です。

王道ド直球のアニソンかつアイドル曲ということで、会場の熱気は最高潮に。最初は少し動きがかたいようにも見えましたが、いざ歌い始めたら何のその。


音楽に合わせて体を動かし、仮想空間の客席よりももっと先、画面の向こうにも届くように、声を張り上げる。杏子様自身がむちゃくちゃ楽しそうに歌っていたので、見ていて自然と体が動いてしまっていたことを覚えています。
途中、ちょっと間違えてしまっても、すぐにリカバー。間奏でぴょんぴょん飛び跳ねながら客席に両手を振る姿は、ステージのエフェクトがなくてもキラキラと輝いているように映ります。

かと思えば、ステージに飛んできたハートのギフトを見て、「ハートぉ! ありがとォ!」と絶叫。他の誰よりも、彼女自身が楽しんでいることが伝わるパフォーマンスでした。
歌唱後はファンへの感謝の言葉を叫んで、完全燃焼といった様子だった杏子様。最後にふさわしく、清々しいパフォーマンスで魅せてくれました。
再びのスペシャルステージと、歓談タイム
4人のパフォーマンスが終わると、ステージ裏では審査タイムへと突入。
その間、会場には再びそらちゃんが登場し、『フレーフレーLOVE』と『好き、泣いちゃいそうだ』のオリジナルソング2曲を披露しました。
後者はアルバムでも繰り返し聴いていた曲だったのですが……やっぱり、生で聴くとぜんぜん違いますね……! 感情のこもったサビでキュンときました。
圧巻のスペシャルステージが終わると、ファイナリスト4人を呼んでの歓談タイム。今後やりたいことやVTuberとしての夢を思い思いに語りました。




杏子様のフリーダムっぷりが最高ですね!
授賞式

さて、しばしのほんわかタイムを過ごした後は、いよいよ審査結果の発表です。
賞は全部で4つ。
賞金30万円が贈られるグランプリの他にも、3つの賞が用意されています。賞品はそれぞれに異なりますが、ファイナリスト全員に「『週刊ビッグコミックススピリッツ』のV.V.V.イベント報告記事に登場」するという特典があります。
① =LOVE賞
最初に発表されたのは、「=LOVE賞」。
こちらは、審査員として参加されていたアイドルグループ・=LOVEの3人から贈られる賞です。賞品は、メンバーからのサイン入りチェキ。
受賞したのは、九条杏子さんです。

審査員の齋藤なぎささんによれば、
- ヴァンパイアという独特なキャラが印象に残った
- 声からも笑顔が伝わってきてすごく楽しそうだった
- 歌唱中にファンを楽しませるような演出があった
といった点が決め手になったそう。本物のアイドルから「いつか一緒に共演したいな、って思いました!」と声をかけられるって、冷静になってみるとすごいことですよね……!
② Gugenka賞
続いて発表されたのは、「Gugenka賞」。
こちらは、本イベントを共催するVR/AR企業・Gugenkaさんから贈られる賞です。賞品は、ARフィギュア・HoloModelsとしての商品化。
受賞したのは、紡音れいさんです。

審査員のマンガ家・大童澄瞳さんによれば、
- 声質がすごく良かった
- ミックス技術をはじめ、活躍の幅が広い
- オリジナルソングへの意欲もあり、活動への期待値が高い
という点が、受賞の決め手になったとの話でした。
れいちゃん自身、このイベントのために3Dモデルを用意していたこともあり、HoloModelsとしての商品化は願ったり叶ったりだった様子。お披露目当日にARフィギュア化が決定するって、半端ない速度感ですね……!
③ スピリッツ賞
次に発表されたのは、「スピリッツ賞」。
本イベントを主催する小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』が選ぶ、こちらの賞。賞品は、ゲスト審査員のマンガ家さんのサイン色紙です。
受賞したのは、雨ヶ崎笑虹さん。

審査員の岩崎美憲さん(同誌グラビア編集長)からは、何よりも「『人を感動させる力』が大きく、パフォーマンスからもその強い想いが伝わってきた」という話がありました。
グランプリを目指していた笑虹ちゃんは悔しそうに涙声をにじませつつも、「スピリッツのマンガは怖くて読めてなかったので、この機会にちゃんと読もうと思います」と一言。
そのうえで、これからますます歌の練習に励んで、「来年も応募して、グランプリを取ります!」と抱負を語っていました。
④ グランプリ
そしていよいよ、グランプリの発表です。
グランプリには賞金30万円が贈られるほか、『週刊ビッグコミックスピリッツ』にてカラーグラビアを掲載、さらにデジタル写真集も刊行されます(+スポンサーからの追加特典)。
栄えある初代V.V.V.グランプリ。
受賞したのは……鈴鳴すばるさんです!

これは本人も予想外だったらしく、

と大混乱。周囲からは笑い声があがっていました。
審査に際しては、「4人全員のパフォーマンスがハイレベルすぎて、本当に楽しくて、『全員合格でいいよね』っていう空気感が審査員ルームにも漂っていた」と明らかにした、審査委員長・前田裕二さん。
そんななかですばるさんが選ばれたのには、2つの決め手があったそうです。
1つは、「最高得点を叩き出していた」こと。ファイナリストそれぞれに点数を振ったところ、数字上では、すばるさんが一番評価されていたという話でした。
もう1つは、「選曲が一番合っていなかった」こと。審査員のあいだではほぼ満場一致でこの意見が出ていたそうですが、「それでも選ばれる」ほどのポテンシャルの高さが評価されたそうです。

そのうえで前田さんは、3つのアドバイスを提言。
これは主にすばるさんに向けての助言ですが、他のファイナリストのみなさんも耳を傾け、時折大きく頷きながら聞いていました。
第一に、「優れるよりも、異なってほしい」というメッセージ。
周囲よりも優れること、うまく歌おうとすることは大事ですが、秀でた歌唱力を持つ人がすでに大勢いるレースでは、技術だけで勝つのは難しい。「楽器を持たない」ことで存在感を発揮し、やがて紅白歌合戦に出場するほどの人気アーティストになったゴールデンボンバーを例に挙げて、技術的に「優れる」よりも独自性によって「異なる」ことの大切さを説明しました。
第二に、「おしゃべりの仕事を増やしたほうがいい」というアドバイス。
すばるさんの話し声について、「めちゃくちゃ好きで、不思議なパワーが秘められているような気がします」と、べた褒めしていた前田さん。誰が聞いても素敵に感じられる歌声は言うに及ばず、魅力的な喋り声を活かした活動をもっとしてほしい。そのように話していました。
第三に、「余白を持ったほうがいい」という指摘。
テレビ番組やアイドルのイベントで、ミスしてしまったり、おっちょこちょいだったり。そのようなパフォーマーのほうが不思議と注目を集め、魅力的に感じられるのはなぜか。それは、「足りていないところをオーディエンスが埋めに行こうとする」構造がエンタメにあるから。
すばるさんには、その「足りていないところ」=「余白」をもっと意識してほしい。歌唱力や声色といった独自の魅力をすでに持っているので、それ以外の部分で「埋めてあげたいな、支えてあげたいな」とファンに感じさせる、「余白」を設けてみてはどうか。
そして、その足りない部分も愛してもらえるようなアイドルであり、アーティストであってほしい──。そうまとめて、審査委員長としての発表を締めくくりました。
以上の前田さんの話を受けて、すばるさんからも改めて一言。

惜しくもグランプリには選ばれなかったファイナリストも含めて、審査員のみなさんの話からは、きっと得るものも多かったのではないでしょうか。
最後は、すばるさんのオリジナルソング『Next world』を披露。ステージ上では他のファイナリストも音楽に合わせて体を動かしつつ、客席も含めて大盛りあがりのまま、授賞式が終了しました。
まとめ

そらちゃんの挨拶で無事に幕を閉じた、第1回V.V.V.。
企業や個人の枠を飛び越え、数々のVTuberが参加し、複数の審査方法でしのぎを削り、最後はVR空間で歌とダンスを披露してグランプリを決定したV.V.V.は、数あるVTuberの「公開オーディション」の中でもひときわ目立ち、また大きく盛り上がったイベントとなりました。

最終審査である「マーメイドシャングリラステージ」だけでもこれだけのドラマが生まれていたのですから、オーディション全体を通して振り返れば、もっとたくさんのドラマがあったのではないでしょうか。
「オーディションきっかけで知ったVTuberがいる」という人も結構いらっしゃるでしょうし、ファン目線でも楽しめるイベントだったように感じます。
V.V.V.2020が開催される──かどうかはまだ未定ですが、もし開催されるようなら、きっとまた見に行くんだろうな……と思っています。VTuberのVRライブとしても純粋に楽しかったですし、それ以上に、夢に向かって突っ走る“アイドル”のみなさんの姿が本当に眩しくて、元気をもらえたので。
第2回V.V.V.の開催を、いちVTuberファンとして、お待ちしております!
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