笑えて切ない、青春ラブコメの短編集『宮田書店へようこそ!水あさと短編集』感想

宮田書店へようこそ! 水あさと

『デンキ街の本屋さん』でもおなじみ、水あさと@mizuasatoさんの短篇集を読みました。

2012年発売の本作『宮田書店へようこそ!』は、コミック誌で掲載された読み切りを中心に収録した1冊。過去に同人誌として発表した作品も含めた全7話の物語を読むことができ、ちょっとしたスキマ時間に読んで笑える短編集となっています。

収録作品の多くは「“水あさと節” 全開!」な物語。圧倒的にギャグ色が強いものの、それと同レベルで恋愛色も見受けられるのが、本作の特徴です。pixivで80万近くのPVを集めている1枚絵『卒業』を元に描かれた『帰れない二人』など、甘酸っぱいストーリーも盛りだくさん。

ここでは、特に印象的だった2編を簡単にご紹介します。

 

『帰れない二人』

卒業式という、学校最後の1日。
いつもつるんでいた悪友と、教室でふたりっきり。
そこで黒板を使って伝えられたのは――。


こちらの『卒業』は2017年2月現在、pixivで閲覧数78万を超える人気イラスト。「ストーリーのありそうな1枚絵」として描かれ、公開されるやいなや大反響を集めました。

もともとコミティア(※)の新刊で描くつもりだった話のイメージイラストであり、それをひとつの物語として仕上げたのが、この短編集に収録されている『帰れない二人』です。2011年開催のコミティア95で頒布されたのち、本短編集にも収録されることとなりました。

コミティア(略称:ティア)は、年4回開催されている「創作(オリジナル)」のジャンルに限定した同人誌即売会。コミックマーケットなどでよく見られる「二次創作物」は禁止されており、クリエイターの個性が光る創作の場となっています。マンガのほか、イラスト、小説、評論、音楽、各種グッズなど、頒布作品が幅広いのも魅力。

そんな『帰れない二人』は、筆者本人も「水あさとの一つの転機となった作品です」と書いておられるほどに思い入れの深い作品なのだとか。

僕自身、まさにこのイラストで水あさとさんの存在を知り、著作をチェックするようになったので、いろいろな人の心や行動を動かした作品だと思います。 “青春の1ページ” を体現したかのように淡く切ない1枚絵が、もう最高にたまらない。

帰れない二人 水あさと

水あさと『宮田書店へようこそ!水あさと短編集』 P.26より

このページから結末へと向かう展開が、またすばらしいのです。卒業式という「ゴール」から新しい「スタート」への第一歩、その先にはあるのは――?

 

『宮田書店にようこそ!』

もう1編の舞台は、どんな街にでも1軒はありそうな普通の書店。
しかしその実、『デンキ街の本屋さん』の原型となった作品なのだとか! マジか!

本作の登場人物は、コワモテだけど照れ屋さん、照れると思わず大声を出してしまう「先輩」と、真面目だけどドジっ娘、そこはかとなく天然っぽさも感じる後輩の「女の子」。

そんな先輩後輩関係にある2人の関係性を描いた話であり、どこか少女マンガのような雰囲気も感じられる物語。先輩も後輩もどちらもかわいい、ほっこりできる関係性が素敵な作品です。ポジティブな意味で “少女マンガ” チックと言いますか……決してドロドロしているわけではなくってよ!

また、『宮田書店にようこそ!』は短編集のなかで唯一の2本立て。ほかの短編は「このあとがむっちゃ気になるんですががががが!」と良くも悪くもモヤモヤが残る話が多いなか、しっかりと尺を取って描かれている点も魅力です。

読み終えたあとには素直に「いい話だった……」と思えて、非常にすっきりとした読後感を得られる感じ。でもやっぱり、「叶うなら、これをぜひ連載で読みたい……!」とも思えてしまうんですよね。『デンキ街の本屋さん』を読もうそうしよう。

宮田書店へようこそ! 水あさと

水あさと『宮田書店へようこそ!水あさと短編集』 P.134より

恋する女の子の赤面にもキュンキュンするけれど、こういう顔もいい。個人的に水あさとさんの絵柄の魅力だと勝手に思っている、「丸顔かわいい」が凝縮された1コマだと言えるでしょう。ほっぺをツンツンしたい。

 

笑えるだけじゃない、哀切も感じられる短編集

冒頭にも書いたように、全体的にギャグ色が強い短編集、それがこの『宮田書店へようこそ!水あさと短編集』です。 “水あさと節” に満ち満ちておる……。

かと言って、完全に「ギャグマンガ」に振り切れているわけでもなく、思春期の男女の青春模様にちょっとした切なさも感じられる。――そんな魅力も合わせ持っており、バランスの取れた短編集だという印象を受けました。

ふとした瞬間に手に取って読み返し、思わずクスッと笑わされながらも、読んだあとはほっこりできる物語たち。季節の移り変わりが感じられるこのタイミングにこそ、おすすめできる1冊です。水あさとさんのファンもそうでない人も、ぜひ手に取って読んでみてくださいな。

 

おすすめプラス+!

水あさとさんと言えばやはり『デンキ街の本屋さん』が有名ですが、その一方では『宮田書店へようこそ!』のような短編集もしばしば発売しています。

そのなかの1冊が、『男子トイレで待ち合わせ』。同じくギャグ&恋愛の要素が混在した短編集となっていますが、こちらはさらに「下ネタ」をプラス。ラブコメでありながら、割とガンガン攻めた感じのギャグマンガともなっており、大好きな人も多いはず。

要するに「笑い」に特化した短編集であり、水あさとさんならではのぶっ飛びギャグが好きな人におすすめ。逆に、上記の『帰れない二人』などで見られる甘酸っぱい「青春」が好みの人は、本作と同時発売の短編集『屋上に咲く花』がおすすめです。

 

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© 2013 水あさと

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